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脳機能測定に使えるいろいろな無侵襲的手法につき,現況において考えられるそれらの長所短所をあげながら,それら手法の比較を行った。これらの手法を使用するにあたって心すべきは,その手法のメリットをできる限り引き出すとともに,その限界をつねに留意していることである。確かな情報を得るためにはまた,互いに相補的な手法を併用した測定を行うことが望ましい。
はじめに
近年,無侵襲計測手法を用いた脳機能計測が,広範な分野で,活発に進められている。無侵襲計測手法として,機能的磁気共鳴映像法(functional magnetic resonance imaging:fMRI),脳磁図(magnetoencephalogra-phy:MEG),脳波(electroencephalography:EEG),陽電子放射断層法(positron emission tomography:PET),近赤外分光法(near infrared spectroscopy:NIRS)などが用いられている。
EEGおよびMEGは,神経系の電気化学的活動が生ずる電磁現象を対象にする。EEGは,神経電流を元にした分布電流が頭表面にもたらす電位差を測定する。MEGは神経電流によって発生する微弱な磁場を,頭表面に配置した高感度磁束計を用いて計測する。そこで,これらの手法は神経活動に関する直接的な情報を得ることができる。しかしながら,1個の細胞が発生する電位や磁場は非常に小さいため,これを直接頭表面で観測することは困難である。観測されるのは局所的な細胞群がコヒーレントな活動をするときに,まとまった形(ベクトル和)として現れる電位変化あるいは磁場変化である。
MEG,EEGに対し,fMRI,PET,およびNIRSは脳活動に伴う血液動態,代謝課程の変化を反映した情報が描出される手法である。神経活動と血液動態,代謝反応が空間的にも,時間的にも結びついていることは古くから知られ,また最近その相関機作の理解が進んではいるが,未だに不明な点が多く,この問題の解明は脳機能解明にとって重要なものの一つである。
MEGでは10ms程度あるいはそれ以下の精度での同期性の高い活動しか観測されないのに対して,fMRI,PET,およびNIRSの信号変化はシナプス活動の同期,非同期にはあまり関係なく,その活動量を反映しているとみることができる。いずれの手法もシナプス活動を反映した信号変化を観測していて,神経細胞のfiring pattern(アクションポテンシャル)を直接測るものではない。また,シナプス活動の様子によっては,信号変化として捉えることができない場合もある。したがって,各手法で得られる情報の内容を見極めるとともに,知りたい脳機能が何であるかによって測定手法を選択する必要がある。主な測定手法の特徴を表1にまとめるとともに,各手法の現状と今後について簡単に述べる。
Various non-invasive methods to measure brain function have been described for comparison by pointing out their merits and disadvantages. These modalities include fMRI, MRS, MEG, EEG, PET and NIRS. In order to get reliable information, it is always advisable that one should make use of the full advantage of the method but at the same time should be aware of its limit, and it is also helpful to use mutually supplemental methods to improve the reliability of the result.
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