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動物界の進化史におけるヒトの位置を最も明確に規定しているのは,言語を操る能力であり,そして,その能力を実現しているのは,ヒトの脳である。チンパンジーやゴリラなどのようなヒト以外の高等霊長類でも,実験的な条件次第ではヒトの言語と似たような様式でのコミュニケーションが可能であるが,自然環境下で言語活動を営んでいるのは,動物界の中でヒトのみである。そのユニークな能力は,進化史の中で一体いかにして獲得されてきたのか,そしてそれがいかなる意味を持つものなのか,それらを論じることは,ヒトという存在が一体何者なのかを解き明かす試みである。ヒトの言語をめぐるそのような考察は,様々な分野において可能である。動物行動学的にも,認知心理学的にも,言語学的にも,そして計算論的神経科学の分野においても,この問題をめぐる議論は絶えることがない。しかし,ここで強調したいことは,いかなる観点から論じるにしても,ヒトの脳の構造と機能の問題を離れては,言語の問題を論じることはできないということである。今回,本誌で特集「言語機能の脳内メカニズム」を組んだのは,そのような理由によるものである。
はじめに
動物界の進化史におけるヒトの位置を最も明確に規定しているのは,言語を操る能力であり,そして,その能力を実現しているのは,ヒトの脳である。チンパンジーやゴリラなどのようなヒト以外の高等霊長類でも,実験的な条件次第ではヒトの言語と似たような様式でのコミュニケーションが可能であるが,自然環境下で言語活動を営んでいるのは,動物界の中でヒトのみである。そのユニークな能力は,進化史の中で一体いかにして獲得されてきたのか,そしてそれがいかなる意味を持つものなのか,それらを論じることは,ヒトという存在が一体何者なのかを解き明かす試みである。ヒトの言語をめぐるそのような考察は,様々な分野において可能である。動物行動学的にも,認知心理学的にも,言語学的にも,そして計算論的神経科学の分野においても,この問題をめぐる議論は絶えることがない。しかし,ここで強調したいことは,いかなる観点から論じるにしても,ヒトの脳の構造と機能の問題を離れては,言語の問題を論じることはできないということである。今回,本誌で特集「言語機能の脳内メカニズム」を組んだのは,そのような理由によるものである。
Homo sapiens is well characterized by the unique capacity of naturally acquired language which is a product of human brain. Consequently, scientific research for elucidating the brain mechanism of language is to clarify the more fundamental question what is the biological base of human nature. This special issue“Brain mechanism of language”is edited to raise many questions about the various aspects of the brain activities related directly or indirectly to the biological mechanism of language. As an editor of the present special issue, I hope that many hot discussions will arise among the readers of the journal stimulated by the excellent papers appearing in it.
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