特集 家族ぐるみの援助を考える
家族療法の考え方と実際—家族ケアに生かすために
木下 敏子
1
1立正佼成会附属佼成病院小児科
pp.1170-1176
発行日 1989年12月1日
Published Date 1989/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922424
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医学の進歩に伴って病気にのみ焦点を当てられてきた治療や看護が今,見直しを迫られており,病気にかかっている患者さんを治そうとする,言ってみれば,ごく当たり前の考え方に戻ってきたことは喜ばしい限りである.
医者になりたての頃,「この忙しいのにお母さんの愚痴につき合っていられないわ」とぼやいた私に,先輩が「患者さんの経済面から色々な悩みまで相談されるようにならなきゃあ,本当の医者じゃあないよ」と諭されたことを思い出す.
確かに心と身体の両面から全人的な医療をするには,その人が置かれている環境まで含めたかかわりが必要なことは言うまでもない.中でも,患者さんの家族との関係は特に大切である.しかしながら,家族と上手につき合うのは「言うは易く,行なうは難し」という諺の通りである.そこで,私たちが数年前から小児の心身症の治療に取り人れている家族療法の面接法を応川すると,患者さんとその家族を援助するのに役立つと考えたので,始めに家族療法についての一般的なことを,次いで面接の方法について述べる.
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