特集 医師のウェルビーイング
【総論】
❷医師のウェルビーイングの重要性—産業保健、メンタルヘルス対策の観点から
安藤 明美
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1安藤労働衛生コンサルタント事務所
キーワード:
メンタル不調
,
上司との関係性
,
睡眠時間
Keyword:
メンタル不調
,
上司との関係性
,
睡眠時間
pp.636-642
発行日 2024年6月15日
Published Date 2024/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429204823
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産業保健の観点から ウェルビーイングを妨げる要因に産業衛生の考え方で対応する意義や背景
◦基本的な考え方
産業保健の考え方や活動は、労働安全衛生法に基づき、日本におけるすべての職場において求められるものです。しかし、「医師も労働者の1人である」という考え方にあまり馴染みがない医師、医療機関は少なくありません。さらに、医師という職業に求められる社会的役割からくる職務特性(表1)1)もあり、十分に法令尊守が行き届いているとは言いがたい状況です。ですが、医師も医師である前に「人」です。「人」として生まれてきたからには、自身のウェルビーイングを大切にしながら生きること、それが許される状況にあって初めて、人の痛みにも共感し続けることができるのではないでしょうか。
日本では、労働者のウェルビーイングを重視した「健康経営」が、個人の生産性向上や人材確保においてよい効果があること、それらが企業全体によい効果をもたらすことが知られるようになり、「働き方改革」や「健康経営」を推進する企業が増えています。本稿では詳細には触れませんが、企業における健康経営実現のために、労働者の健康管理や、長時間労働の是正など、産業保健が大きく寄与しています。その一方で、医療機関の場合は、経営の視座に立ったとしても営利のみを求めることは許されません。日本医師会による『医師の職業倫理指針』2)においても「医師は医療を受ける人々の人格を尊重し、優しい心で接するとともに、医療内容についてよく説明し、信頼を得るように努める」とされています。ここで述べられている「優しい心で接する」という表現は、別の表現では「共感をもって接する」とも言えます。
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