#総合診療
#書評:病状説明—ケースで学ぶハートとスキル
藤沼 康樹
1
1日本医療福祉生協連合会 家庭医療学開発センター
pp.591
発行日 2024年5月15日
Published Date 2024/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429204807
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
医師は患者の診断と治療を行う仕事であると、一般にはイメージされています。しかし実は、患者や家族に何らかの「説明」をすることに、多くの時間を費やしています。入院時の説明、病状の説明、予後の説明、退院や転院の説明、お看取り後の説明など、実に多くの場面で「説明」をしているのです。
こうした「説明」がわかりやすいタイプの医師と、わかりにくい・伝わりにくいタイプの医師がいることは、私の経験上も明らかです。たとえば、病状説明をする時に、疾患の病態生理をまるで学生に講義するように行う医師もいれば、まず患者の様子をみて「いかがですか?」と開かれた質問を使って説明相手の感情にアプローチする医師もいます。おそらく説明する内容(コンテンツ)は医学知識に由来するものでしょうが、その語り口はほぼ個々の医師の「個性」と従来は見なされていたように思います。この個性は医師自身の生育史や価値観に相当依存したもので、ある種のバイアスに満ちています。しかも、退院や転院の説明などは、医学知識の伝達というよりは、ある種の「意思決定」を伝えて同意をしてもらうということです。また、治療の説明は、患者・家族と医療者で共同の意思決定を要するので、単なる伝達ではありえず、ヘルスコミュニケーションのなかでも最も難しい部類に入るものです。「個性」だけに依存していると、うまくいかない場合の対処に困り、医師自らが“困難事例”を生み出してしまうことになりかねません。
Copyright © 2024, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.