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病歴
患者:61歳、男性
主訴(入院時):発熱、体動困難
現病歴:妻、息子と3人暮らし。2年前まではトラック運転手をしていたが、退職して以降はあまり食事を摂らず朝から酒を飲んで過ごしていた。1カ月ほど前から徐々に動けなくなり、最近は寝たきりになっていた。来院3日前から食事・飲酒をしなくなった。来院前日夜、体熱感があったため検温したところ38.2℃であった。来院当日、解熱しないため妻により救急要請された。
既往歴・薬剤歴:特記なし。
生活歴:正確な飲酒量は不明。1日40本の喫煙歴がある。
入院後経過:来院時はGCS(Glasgow Coma Scale)E4V1M5の意識障害、39.3℃の発熱があるが、他のバイタルサインは安定していた。仙骨部、左右大転子部、左膝、左足に褥瘡を認めた(図1)。瞳孔径は両側とも3mmだが対光反射はやや緩慢、四肢に明らかな麻痺はなかった。血液検査ではWBC・CRPの上昇、腎機能障害、高Na血症を認めたが、意識障害を説明しうるような異常はなかった。TSHは3.78μIU/mL。念のため頭部CT、MRI、髄液検査も施行したが、いずれも異常はなかった。胸部CTで左下葉背側に気道散布性の浸潤影を認めた。
アルコール利用障害によるビタミンB群の欠乏から歩行障害、認知機能障害をきたし、最終的に誤嚥性肺炎を併発したと考えた。アンピシリン・スルバクタムで治療を開始しつつ、ビタミンB群の補充を行う方針とした。褥瘡に対してはポビドンヨード含有軟膏塗布による処置を開始した。抗菌薬開始翌日には解熱が得られ、意識レベルもビタミン補充開始後すみやかに改善した。なお、治療開始前のビタミンB1は36ng/mL(24〜66ng/mL)と正常値、ビタミンB12は144pg/mL(180〜914pg/mL)と低値であった。
第12病日に発熱、血圧低下があり、腎盂腎炎による敗血症性ショックとしてメロペネムを開始、その後発育した菌の感受性結果からセフォチアムに変更し、合計2週間治療を行った。第31病日にも再度発熱があり、腎盂腎炎の再発としてセフォタキシムで治療を開始した。尿培養で緑膿菌が検出されたためセフタジジムに変更し、合計10日間治療を行った。
ところが、第43病日から傾眠となり、発語が乏しくなった。それまでは病院食をほぼ全量摂取していたが、ほとんど摂取しなくなった(=今回問題とする病態)。なお、この時点での内服薬はボノプラザン、ビタミンB1・B6・B12配合剤、ポラプレジンクのみであった。
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