特集 “消去法”で考え直す「抗菌薬選択」のセオリー—広域に考え、狭域に始める
【抗菌薬選択クイズⅢ】スキルアップ! 抗菌薬の要否と選択
❷「フォーカス不明」の感染症の抗菌薬の要否と選択
的野 多加志
1
1飯塚病院 感染症科
キーワード:
臨床推論
,
病歴聴取
,
身体診察
,
原因微生物の推定/同定
Keyword:
臨床推論
,
病歴聴取
,
身体診察
,
原因微生物の推定/同定
pp.827-831
発行日 2023年7月15日
Published Date 2023/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429204365
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1|感染症診療における「臨床推論」
「医学は不確実性のサイエンスであり、確率のアートである」。このWilliam Oslerの言葉のように、医師は、ある“疾患らしさ”の確率を上げ下げしつつ診断を行っている。その手法は「臨床推論」と呼ばれ、「病歴聴取」「身体診察」「診断的検査」「コンサルテーション」から得られた情報を統合することで診断を導き出している。
確定診断にたどり着かない場合には、これらの必要な情報の何かが欠けているはずであり、なかでも「病歴」から得られる情報が最も重要だと考えられている(図1)1)。要するに、診断に重要なプロセスとは、患者と向かい合って詳細な病歴聴取と身体診察を行うことと、検査前確率を意識した適切な検査を行うことなのだ。決して、検査の乱れ打ちや、「発熱=COVID-19(新型コロナウイルス感染症)」「発熱+CRP上昇=細菌感染症」といった短絡的な思考ではない。これらは、臨床推論の原則から大きく逸脱するものであり、診断エラーを起こしかねない。そもそも感染症は、悪性腫瘍や心血管系疾患と並び、「診断エラー(診断の見逃し、間違い、遅れ)」が多い疾患である2)。
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