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Copeをはじめ、あまたある腹痛の書籍における本書の位置づけは何か? 「すぐ・よく・わかる」「急性腹症」のタイトルにあるように、腹痛診療の名著『Cope's Early Diagnosis of Acute Abdomen』を今時に“超訳”された本(「はじめに」より)と言えば、本書の伝えたいメッセージは明確ではないだろうか。Copeは病歴聴取・身体診察の腹痛の標準テキストとして長らく有名であり、評者も学生時代に愛読したが、その輝きは10数年たった今も衰えず、腹痛に関する書籍で何を読むべきか、と聞かれたら推薦3冊のうちに必ず入る本である。研修医教育などのリファレンスは、結局Cope先生の本に戻ることが多い。一方で、Copeが比較的難解であるという欠点(?)は、本書でも指摘されるとおりである。しかし本書は、その欠点を補いつつ、さらに日本の現場感覚を反映した、まさに日本の読者のための“和製Cope”と言えるつくりとなっている。
本書は実用性が高く、またそのなかに臨床の魂が注入されていると評者は感じる。その理由は、第1〜3章の順に「Why」「What」「How」で記載された明快な章割りで誰が見てもわかりやすく、現場で求められる頁を迅速に開くことができる実用的なつくりであり、さらに腹部触診やCT読影の際に体腔内を直観的に頭の中で映像化・想起しやすい具体的なシェーマが多いこと(こういう本がなかなかない!)である。そして、「How」にあたる第3章では、小項目のタイトルを読むだけでも腹痛のピットフォールが網羅できるような直言的メッセージにあふれ、速読で全体像を俯瞰することができる、実用性を意識したつくりになっている。特に、この第3章は必読である。
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