特集 「診断エラー」を科学する!—セッティング別 陥りやすい疾患・状況
【セッティングⅠ】救急外来
❷くも膜下出血/脳梗塞
角替 麻里絵
1
,
上田 雅之
1
1東京都立多摩総合医療センター 神経・脳血管内科
キーワード:
診断エラー
,
くも膜下出血
,
脳梗塞
,
可逆性脳血管攣縮症候群
,
大脳皮質症状
,
頭部CT・MRI
Keyword:
診断エラー
,
くも膜下出血
,
脳梗塞
,
可逆性脳血管攣縮症候群
,
大脳皮質症状
,
頭部CT・MRI
pp.562-566
発行日 2022年5月15日
Published Date 2022/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429203717
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Case1
持続性頭痛のため独歩受診し、頭部CT陰性だったくも膜下出血の授乳中女性の一例
患者:34歳、女性。出産後4週。
既往歴:偏頭痛(スマトリプタン内服中)
現病歴:X日の夕食後、突然頭全体を殴られたような強い頭痛を自覚した。頭痛は若干の改善を認めるもその後も持続し、睡眠が十分とれなかった。X+2日に、スマトリプタンを内服しても改善しないため夫と救急外来を独歩で受診。救急外来担当医が頭部CTを撮影したが、明らかな頭蓋内出血は指摘できなかった。
「普段の偏頭痛発作とは頭痛の経過・性状・部位が異なる(突然発症、片側性や拍動性ではない、トリプタンが効かない)」という患者の訴えから、頭部MRIを撮影すると、FLAIR (fluid attenuated inversion recovery)で左頭頂葉の脳溝に沿った高信号を認めた。MRAでは明らかな動脈瘤を指摘できず、髄液検査でも細胞数・蛋白は正常であったが、赤血球上昇とキサントクロミーが認められた。経過から可逆性脳血管攣縮症候群による「くも膜下出血」を疑い、同日脳神経外科入院・脳神経内科併診とし、カルシウム拮抗薬静注/内服による加療を行いながら経過観察とした。X+14日、経過フォローの目的で撮影した頭部MRAで頭蓋内血管の広範な攣縮を認めた。頭痛・脳血管攣縮所見の改善と、SAHが消退傾向であることを確認し、X+46日に自宅退院となった。
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