特集 実地医家が楽しく学ぶ 「熱」「炎症」、そして「免疫」—街場の免疫学・炎症学
【Ⅰ章:個別の病態で切る!】エキスパートが織りなす怒涛の縦糸—個別から“理屈”をつかむ
❶重症筋無力症—加齢性・非器質的疾患と見誤るな
栗原 正典
1,2
1東京都健康長寿医療センター 脳神経内科
2東京大学大学院医学系研究科 脳神経医学専攻 神経内科学
キーワード:
重症筋無力症
,
抗AChR抗体
,
抗MuSK抗体
,
高齢発症
,
非典型例
Keyword:
重症筋無力症
,
抗AChR抗体
,
抗MuSK抗体
,
高齢発症
,
非典型例
pp.23-27
発行日 2022年1月15日
Published Date 2022/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429203543
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Case
眼筋症状を欠き、併存する精神疾患から診断に時間を要した一例
患者:65歳、女性
既往歴:うつ病で、抗うつ薬・スルピリドなどを内服
現病歴:64歳時に構音障害を自覚し徐々に悪化したため、かかりつけ精神科でスルピリド中止となったが、改善しなかった。半年後から首が下がるようになり近医整形外科を受診し、牽引・ネックカラー装着など行ったが、症状が悪化したため他院神経内科を受診した。頭頸部MRIに異常なく、精神科で薬剤変更後から首下がりを訴えたため薬を戻すことを提案された。その1カ月後から四肢の筋力低下も認め、しゃがみ立ちなどが困難になり当院を受診した。
頸部・四肢近位筋の筋力低下を認め、眼筋症状は明らかでないが、診察時の筋力と問診上のADLの乖離などから重症筋無力症の可能性も考え精査した。抗AChR(アセチルコリン受容体)抗体は陰性だが、反復刺激試験でwaningを、塩酸エドロホニウム試験では咽頭違和感・呼吸困難感・眼瞼下垂を認めた。また、耳鼻科診察で声帯麻痺を認めた。抗MuSK(筋特異的受容体型チロシンキナーゼ)抗体を測定すると陽性であり、「抗MuSK抗体陽性重症筋無力症」の診断となった。プレドニゾロン内服と大量免疫グロブリン療法を行い、症状改善し退院した。
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