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『“実践的”抗菌薬の選び方・使い方』—細川 直登(編)
青木 眞
pp.69
発行日 2015年1月15日
Published Date 2015/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429200056
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●初学者から,「もう感染症の本は十分」と思われるベテランにもお薦め
現在,世界のカルバペネムの7割を消費するわが国に戻ったのは20年ほど前.当時,評者は「西欧かぶれ」の感染症医と呼ばれるにふさわしく,参加する学会,購読するジャーナル,棚に並ぶ成書,全てが「洋物」であった.理由はわが国でメトロニダゾールがアメーバ赤痢や嫌気性菌に使えるようになったのが2012年,わずか2年前(本書p197)という極めてユニークな風景と無関係ではなかったと思う.しかしこの20年で臨床感染症を取り巻く風景は一変した.わが国にも抗菌薬の適正使用を熱く語れる真の臨床感染症の訓練を受けた医師が次々と生まれたからである.グローバルスタンダードを意識した本書は,そのような評者と価値を共有する仲間によってのみ執筆された.評者は各章を読み始めるとき,ついつい章末の執筆者の名前を見ては得心するのだった.
しかし,本書の特徴を「グローバルスタンダードに基づいた抗菌薬の本」と定義するだけでは不十分となる.なぜなら本書は今までにない新しい切り口で書かれているからである.具体的には添付文書が同じ菌,同じ疾患に適応を示す抗菌薬同士の比較が記載されている.一見似たような抗菌薬を,より精密に使い分けるのが目的である.序文で編者いわく「抗菌薬の選択には理由が必要である」.広域抗菌薬を手にした社会が,思考停止にならないための警鐘から始まっている.
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