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待ちに待っていた一冊が出た。神経救急や神経集中治療を行う者にとっては,バイブルの一冊である。私は2009〜2011年の米国クリーブランドクリニックてんかんセンター留学中に多くのICU脳波を判読していた。このころは,米国においてICU脳波モニタリングが爆発的に広がっているときであった。そのときには教科書もなく,意識障害の患者の脳波が多様で判読に難渋していた。帰国後の2012年に『Handbook of ICU EEG Monitoring』の初版が発売となった。本邦でまだ一般的でなかったICU脳波モニタリングを実施する必要性に迫られた私にとっては,求めていた全てのことがこの一冊に書かれていた。この本には「ACNS Standardized Critical Care EEG terminology 2012」が引用され,ICU脳波モニタリングにおける代表的な波形パターンが紹介されており,ようやく救急脳波の分類化が始まったことを感じさせた。その後,さらなるICU脳波モニタリングのエビデンスがさまざまな施設から発表され,2018年に第2版が出版された。本書は,この第2版の日本語訳版である。しかも本書を手に取ってみると,なんと2021年にACNSから出された「ACNS Standardized Critical Care EEG terminology 2021」までもが本書の最後に附録として含まれている。本書を全て読むことで,ICU脳波モニタリングを全て学習することが可能である。
訳者の吉野相英先生は,防衛医大の精神科学の教授である。精神科の教授でありながら,救命救急の本を訳されたというのも大変驚きである。一見そう感じる読者もおられると思うが,至極当然で,吉野先生はてんかん・脳波については大変造詣が深く,すでにそれらに関する著書も執筆されている。また,訳者まえがきにあるように,精神科医として薬物中毒の患者に伴うNCSE(非けいれん性てんかん重積状態)など多くの意識障害の患者の診療に当たっており,脳波を積極的に施行し判読されてこられた。われわれからみても,吉野先生が本書を日本語訳されるに最も適している先生であろうと思う。
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