書評
「ウォーモルド内視鏡下鼻副鼻腔・頭蓋底手術」—Peter-John Wormald【原著】 本間明宏,中丸裕爾【監訳】 鈴木正宣【訳者代表】
寺坂 俊介
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1社会医療法人柏葉会柏葉脳神経外科病院
pp.1116
発行日 2021年10月1日
Published Date 2021/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201902
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私は脳神経外科医として顕微鏡手術を学び,現在も手術を継続している。北海道大学脳神経外科で初めて内視鏡手術が行われたのは,下垂体腺腫の手術だったと記憶している。私の部下が初めて下垂体腺腫に対して内視鏡手術を行ったときのことはいまでも鮮明に覚えている。私は術衣に着替え顕微鏡とともに手術室内に待機した。手術が難航した際には顕微鏡手術に切り替えるつもりだったからだ。当時の内視鏡はいまよりも解像度が低く,内視鏡手術用の道具も限られていた。顕微鏡手術の倍の手術時間と出血量を要したが,私は一度も手術を替わろうとは思わなかった。自分がどんなに工夫しても顕微鏡下手術では見えなかった海綿静脈洞壁や鞍上部がモニターに映し出されていたからである。
ウォーモルド先生が執筆された本書には内視鏡下手術の利点,特に優れた可視性を最大に生かした手術手技が網羅され,しかもその1つ1つが細部に至るまでしっかりと書かれている。例えば内視鏡下髄液漏閉鎖術の章で紹介されるバスプラグ法などは脂肪の採取の部位,糸のかけ方,使用する道具,術後の管理,腰椎ドレーンを入れた場合はその排液量までが細かく記載されている。「賛否が分かれるかもしれないが」とただし書きをつけたうえで,ウォーモルド先生の手技が紹介されている。本書を読んでいると,このような細かな手術手技や術後管理を学びにかつてはお金と時間を費やして海外にまで行ったのに,と思われる諸兄も多いはずである。
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