書評
「≪脳とソシアル≫ノンバーバルコミュニケーションと脳―自己と他者をつなぐもの」―岩田 誠,河村 満●編
祖父江 元
1
1名古屋大学大学院・神経内科学
pp.26
発行日 2011年1月1日
Published Date 2011/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416100826
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インターネット時代に入ってわれわれは大きく世界が広がったように感じている。E-mailにより,外国の相手とも瞬時にコミュニケーションが可能となっており,われわれはこのE-mailなしには1日も過ごせなくなっているといっても過言ではない。しかしこのE-mailは相手の顔が見えないし,声が聞こえない。われわれは文字情報に頼って真意を汲み取ろうとする。一方電話は,相手の声が伝わる。大切な相談や伝達は電話を使うことが多い。相手の声の中に本音を読み取れると感ずるからではないか。相手の気持ちを確かめながら,情報の交換ができると感じている。しかしさらに相手の本音や心に触れるコミュニケーションをとりたい時には実際に会って話をするということを行っている。相手の表情,目の動き,手振り,声の抑揚,姿勢などその情報は格段に増すことになる。われわれは言葉以外の部分にその人の本音の部分,本当の部分が読み取れることを本能的に知っているように思われる。最近では,このノンバーバルなコミュニケーションが大変希薄になっているように感じられる。しかしこのノンバーバルの部分がヒトの成長・発達や社会とのかかわりの中で,より重要で本質的ではないかとわれわれは薄々感じている。インターネット時代の中でのこの部分の希薄さが,最近の社会性の欠如した人間の出現や犯罪にもひょっとして関連しているのかもしれないと感じたりしている。
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