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はじめに
先進各国とアジア諸国では,人口の高齢化とともに認知症患者が爆発的に増加している。現在,世界で2,430万人が認知症とみられ,本邦でも既に200万人を超えている。この認知症患者のうちの半数が,アルツハイマー病(Alzheimer disease:AD)である。ADでは病態解明に基づく根本的な治療法の開発が模索されており,軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)といわれるAD予備軍の存在や,レビー小体型認知症(dementia with Lewy body:DLB),前頭側頭葉性変性症(frontotemporal lober degeneration:FTLD)などの非AD型認知症の病態解明にも飛躍的な進歩がみられている。
現在,ADの治療薬として認知機能の改善のために臨床で実際に使用されている薬剤はコリンエステラーゼ阻害薬のドネペジル(donepezil),リバスチグミン(rivastigmine),ガランタミン(galantamine)の3種類と,N-methyl-D-aspartic acid receptorを部分的に抑制し,glutamateの過剰な刺激を阻害して記憶や学習を改善するとされるメマンチン(memantine)である。本邦で承認されているのはドネペジルのみで,軽度~中等度ADに5mg,重度ADには10mgが使用されている。ほかの薬剤については,本邦では臨床治験がほぼ終了し,現在,申請あるいは申請準備中の段階であり,近い将来の臨床応用が期待されている。これらの薬剤の評価は多数例の前向き無作為対象試験(random control test:RCT)によって解析され,エビデンスが提出されてきた。ここ数年で評価に耐えうるこれまでのRCTのメタ解析が行われ1),これらの薬物のエビデンスもほぼ出そろったと考えられる。脳アミロイドに対するAβ(amyloid β-protein)ワクチン治験の長期予後や抗Aβ抗体による第Ⅱ相試験の結果は,当初予想されていたよりも否定的な結果が提出されたが,現在,数種類の抗Aβ抗体による第Ⅰ相から第Ⅲ相の世界的臨床試験が展開している。これには,MRIによる脳萎縮の進展,PIB(Pittsburgh compound-B)アミロイド画像,CSF(cerebrospinal fluid)tau,Aβなどのバイオマーカーを指標とした新たな評価法も応用されつつある。ここでは,これまでのコリンエステラーゼ阻害薬やメマンチンの重要なRCT結果とメタ解析の報告をまとめ,認知症の薬物療法における現時点での到達点をまとめた。
Abstract
Cholinesterase inhibitors and memantine are widely used for the treatment of Alzheimer disease (AD) and other non-AD dementia worldwide. Since 2000,large scale prospective random control studies using meta-analysis have provided clinical evidence for the use of these drugs in AD and non-AD dementia. Here,we review these reports,including those on other drugs and newly developed drugs,which provide detailed clinical information for the daily management of dementia.
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