海外文献紹介
血糖値と膵癌発症リスクには用量反応関係がある?
砂金 知里
1
,
中神 朋子
1
1東京女子医科大学 糖尿病センター
pp.607-608
発行日 2015年7月15日
Published Date 2015/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415200202
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膵癌の死亡率は高く,診断時に患者の約85%が切除不能と判断され,いまだに5年生存率は5%未満にとどまっています.また,罹患率と死亡率は世界的に上昇しつつあり,英国では癌の部位別死亡率の第5位,米国では第4位が膵癌となっています.そのため,修正可能な危険因子を同定し膵癌を予防することが望まれています.先行する疫学研究では,2型糖尿病が膵癌の危険因子であることがすでに示されています.また,インスリンが膵癌細胞の増殖を促進しアポトーシスを抑制すること,高血糖が膵癌細胞の増殖と浸潤能力を高める可能性を示す実験結果の報告もあります.高インスリン血症と高血糖は,前糖尿病状態の段階ですでに認められると報告されていますが,血糖値と膵癌の関係を調べた複数の研究では,一貫した結果は得られていませんでした.今回,血糖値と膵癌のリスクの用量反応関係を評価することを目的とした前向き観察研究の系統的レビューのメタ解析が行われましたので紹介します.
分析対象は,2013年11月30日までに発表された文献のなかから血糖値と膵癌のリスクの関連を評価した前向き観察研究9試験です.追跡期間中に計2,408人が膵癌に罹患しており,4試験がヨーロッパ,3試験がアジア(1試験はアジアとオセアニア),2試験が北アメリカからの研究です.平均年齢はいずれも40〜50代で,平均観察期間は最短が5.3年,最長が25年です.各試験での補正変数には年齢,喫煙,BMIを含んでいます.
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