海外文献紹介
ピオグリタゾンと膀胱がん発症リスクの関係は?
伊藤 新
1
,
中神 朋子
1
1東京女子医科大学糖尿病センター
pp.906-907
発行日 2015年11月15日
Published Date 2015/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415200288
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PPARγ作動薬であるピオグリタゾンは,現在市販されている唯一のチアゾリジンです.PPARγは主として脂肪細胞に多く発現しており,刺激されると遊離脂肪酸の働きが抑制されアディポネクチンが増え,インスリン感受性が改善することで血糖降下作用を発揮するため,より広く使用されてきました.しかし,2010年にフランスの後ろ向き研究で“ピオグリタゾン使用者では非使用者に比べて,膀胱がんの発生リスクが1.2倍上昇しており,総投与量や投与期間に応じてリスクが上昇する可能性がある”と報告されました.その後,米国食品医薬品局(FDA)はこのリスク評価のため10年間の前向き観察データの分析を命じました.市販後5年間の中間解析では,非使用者に比べて使用者では膀胱がんリスクは1.2倍増加したものの,有意ではありませんでした.別の研究からは膀胱がんリスクは上昇しないという報告もありましたが,満を持して市販後10年間データの解析の最終結果が報告されましたので紹介します.
本論文では後ろ向き観察研究と症例対照研究が行われ,膀胱がんや他の10種のがん(前立腺,乳,肺,子宮内膜,結腸,非Hodgkinリンパ腫,膵,腎,直腸,悪性黒色腫)の発生にピオグリタゾンが関連しているかどうかを調べています.膀胱がん用のコホートとして,1997〜2002年の時点で登録された40歳以上の193,099人の対象を2012年12月までフォローアップし,464人の対象患者とマッチさせた464人のコントロール群を設定.10種のがんに関しては1997〜2005年の時点で登録された40歳以上の236,507人を対象とし,2012年6月までフォローアップしました.
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