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糖尿病診療とはあまり関係がない話題ですが,マッチングの結果が先日まとまりました.マッチングというのは,新卒の医師がどこの病院で初期研修を行うかを決めるために毎年行われているもので,研修医の希望と研修病院の受け入れとを調整する作業です.
筆者は北海道の大学病院勤務ですが,この研修制度が始まってから研修医が激減しました.大学以外の研修病院を選ぶことが容易になったためですが,このためどこの医局も人員不足に頭を悩ませています.医局から関連病院へ派遣する研修医の人数も当然減り,さらには常勤医師の派遣も困難になっています.今回のマッチングの結果では,大学病院の不人気はようやく底を打ったようにみえました.しかし,大学の研修担当者の話を聞くと,北海道内の医学部を卒業しても道外で研修する割合が増えているとのことです.2年の初期研修を終えると,後期研修というプログラムのもとでさらに研修をすることになりますが,道内の研修医は後期研修にも道外の病院を選ぶ傾向があるそうです.その結果,道内の若手医師不足は加速し続けているということです.これは北海道だけに限った問題ではないと思いますが,医師不足(というより偏在?)のうえ,診療科間での医師数不均衡,医療技術の高度化,患者意識の高まり,訴訟問題なども加わり,医師1人あたりの業務が限界を超えて増え続け,その結果医師が病院を辞めていく.その後残った医師の業務が倍増する,という悪循環に陥る.道内の複数の病院で閉鎖を余儀なくされる診療科が後を絶ちません.このような医療崩壊が地方を中心としてジワジワ進行しています.しわ寄せは,患者に来ています.近くに受診する病院がなくなっていくのです.人気病院には定員以上の研修医が応募しており,病院業界も格差社会というところでしょうか.これは糖尿病診療も例外ではなく,糖尿病専門医が空席になっている病院が札幌圏内にも出てきています.
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