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Case 1
1型糖尿病発症後のハネムーン期にインスリンが不要になり,その後過激な食事療法と運動療法で著明なやせ,肝障害をきたした青年
現病歴:2000年11月(21歳)頃から口渇,多飲,多尿,体重減少あり(1カ月に55 kg→50 kg,身長177 cm).近医にて血糖369 mg/dL,HbA1C 15.9%.糖尿病の診断にて,糖尿病専門医のいる病院に入院.抗GAD(抗グルタミン酸脱炭酸酵素)抗体陽性,尿中CPRは著明に低下しており1型糖尿病と診断され,インスリン療法を開始(混合製剤ペンフィル30 R朝食前8単位,夕食前4単位).糖尿病教室にて1,800 kcalの指導を受けた.退院後,1日1時間の歩行,腹筋100回,背筋100回を励行,食事は指示カロリーより少なく摂取しており血糖は次第に低下し,2001年3月にインスリンが不要となった(この時の尿中CPR 30~50 ng/day).しかし著明なやせと肝障害を認め,紹介にて5月1日当院を初診.
家族歴:糖尿病なし.
初診時身体所見:体重49 kg(BMI 15.6).肝腫大なし.腱反射正常.眼底異常なし.
検査所見:HbA1C 6.1%.微量アルブミン尿(-).
血中CPR 3.37 ng/mL.GAD抗体12.0 U/mL.TSH 3.52 μIU/mL.FT4 1.10 ng/dL.GOT 44 mg/dL.GPT 102 mg/dL.
初診後経過:摂取カロリーを増やすこと,特に炭水化物を十分に取ること,インスリン注射が必要であること,体重が戻るまで過激な運動は控えることを説明し,インスリン注射を少量より再開した.(朝食前速効型1単位,昼食前速効型3単位,夕食前速効型2単位,眠前中間型2単位).HbA1C 5.5~6.0%であったが,体重が増えず,8月に母が来院し家では野菜ばかり食べていることがわかった.表1を1食に最低5単位ずつ食べるように指導し,その後体重も少しずつ増加,2002年3月には肝機能も正常化した.
現在(2003年5月),インスリンを朝食前速効型13単位,昼食前速効型13単位,夕食前速効型15単位,眠前中間型14単位で使用中,体重60 kg,HbA1C 5.8%,血中CPR(朝食後)0.22 ng/dLである.
Case 2
14歳で清涼飲料水ケトーシスにて糖尿病を発症し,現在インスリン治療を行っているが,治療中断を繰り返しているコントロール困難な若年肥満2型糖尿病の青年
現病歴:1994年11月14日(14歳),倦怠感があるため近医受診したところ,血糖399 mg/dL,HbA1C 10%で入院を勧められたが放置(体重98 kg).その後体重減少(98 kg→90 kg),多飲多尿がひどくなり12月2日自分で近医を再診.血糖501 mg/dL,HbA1C 13.1%.F病院を紹介され入院.糖尿病性ケトアシドーシスの診断でインスリンを開始(混合製剤ペンフィル30 R朝食前24単位,夕食前14単位).2型糖尿病の診断で食事は1,600 kcalを指導された.退院後,インスリン注射量は次第に減量し,混合製剤ペンフィル30 Rを朝食前2単位でHbA1C 5~6%にコントロールされたが,次第に体重増加(100 kg,BMI 33.8)した.インスリンを増量(ペンフィル30 R朝食前20単位,夕食前18単位)してもHbA1C は悪化し,1997年12月に2回目の入院.インスリンを減量(ペンフィル30 R朝食前18単位,夕食前14単位),1,600 kcalの食事としたところ直ちにコントロール良好となった(空腹時血糖90~110 mg/dL,食後2時間血糖110~140 mg/dL).退院後はインスリンを忘れることが多く,F病院にも3カ月通院を中断してしまった.1998年8月当院を初診.
家族歴:父,母とも2型糖尿病(父:食事療法,母:経口血糖降下薬内服).
肥満歴:幼児期より肥満,Max BW 98 kg(14歳).
初診時身体所見:身長172 cm,体重93.4 kg,BMI 31.6.
血圧138/88 mmHg,腱反射正常.眼底異常なし.
検査所見:空腹時血糖274 mg/dL.HbA1C 7.9%.尿蛋白(+).空腹時血中CPR 2.8 ng/dL,抗GAD抗体(-),GOT 26 mg/dL,GOT 62 mg/dL,T-Cho 248 mg/dL,TG 166 mg/dL.
初診後経過:1日2回の混合型インスリン(ペンフィル30 R朝食前18単位,夕食前14単位)と1カ月ごとの定期受診を忘れないことを約束した.しかし,その後2~3カ月ごとの受診状態で,HbA1C 11~14%が続いていた.インスリンを増量(1日94単位)するもコントロールは改善せず,メトホルミン1日750 mgを併用し,いったんはHbA1C 8.8%まで下がった.その後,4カ月間治療を放置し増悪したため再度インスリンとメトホルミンを再開した.しかし,その後少し改善すると放置するということをこれまで通り繰り返している.現在インスリン(中間型朝食前24単位,夕食前24単位),メトホルミン(1,500 mg),グリベンクラミド(2.5 mg)併用にてHbA1C 11%,体重88.2 kgである.時々栄養士が声をかけるが,コーラはやめられず,野菜嫌いであまり食べない.甘いものをよく食べ,食事は肉を中心にアルコールも多い.運動はほとんどしない.合併症:網膜症(-),神経障害(-),腎症(蛋白尿±~+).
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