"なぜ診断できないか"を科学する・10
片麻痺を伴う意識障害と頭部CT
江村 正
1
1佐賀医科大学総合診療部
pp.977
発行日 2002年10月15日
Published Date 2002/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414903646
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意識障害の患者を診た時に,まず鑑別疾患で思い浮かぶのは脳血管障害であろう.とくに片麻痺を伴う,もしくは神経学的に左右差のある場合はなおさらである.そして,緊急の頭部単純CTで高吸収域が見つかれば,脳出血の診断がつく.低吸収域が明らかでなくとも,麻痺と反対側の大脳半球において,脳室の変形やmidlineのシフトが認められれば,広範囲の脳梗塞と診断される.ところが,この経験を何例か積むと,意識障害の患者では頭部CTを撮りさえすれば診断がつくかのごとく,錯覚に陥ってしまう研修医がいる.そして,検査施行前に十分な情報を得ていないために,単純CTで明らかな異常がない場合,診断がわからなくて,はたと困ってしまうのである.
通常,疾患は発症の仕方で鑑別は絞られる.とくに神経疾患では,有用である.突然の発症は,血管性すなわち脳血管障害を強く疑わせるが,忘れてならないのが痙攣発作である.痙攣は,目撃されていない場合が多い.たとえば「食事の時間になっても姿を現さないので,部屋に行ってみたら,倒れていた」と言って家族が連れてくる.その際,片麻痺を認めれば,脳血管障害を疑うのは自然であるが,Todd麻痺を伴った痙攣発作後の状態(postictal stage)を忘れてはならない.
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