漢方的発想を生かした治療学・7
免疫・アレルギー疾患
富井 明望
1
,
丁 宗鐵
2
1富井医院
2東京大学医学部生体防御機能学
pp.659-665
発行日 2001年7月15日
Published Date 2001/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414903304
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免疫・アレルギー疾患と漢方的発想
漢方医学における免疫・アレルギー疾患へのアプローチの着眼点は,「正気」あるいは「真気」―つまりからだの正常な生理機能を保ち,外部あるいは内部の異常状態・病理的変化や産物―「邪気,外邪あるいは内邪」から守ることである.漢方医学の最初の経典である『黄帝内経』の「素問・遺篇刺法論」には,「正気内に存すれば,邪気干すべからず」と述べられているが,これは正気が体内に充実していれば,病邪が侵入することができないとの意味である.逆に正気が衰退した場合,邪気の亢進により,生体のバランスの乱れが生ずる.したがって,免疫・アレルギー疾患に関する漢方医学の治療方針は表面的な病態より,それをもたらした体質的な要因―つまり邪気(とくに内邪)の除去,改善を目指すことである1).また,免疫・アレルギーが関与した病態は,生体の神経―免疫―内分泌の相互関係にバランスの乱れが生じたためである,と考えられている.漢方医学はその調節に重点を置いて治療を行う.
また,漢方医学は上記正気vs邪気の発想から出発して個々の疾患または症状について分析し,それぞれの個体に相応しい治療法を見つけ出す,いわゆる「証」(J1)に沿った治療方法である.
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