再評価後の漢方治療入門―もう一度随証治療・10
五積散と当帰四逆加呉茱萸生姜湯
坂口 佳司
1
1坂口循環器科内科医院
pp.917-920
発行日 1999年10月15日
Published Date 1999/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414902843
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現代の漢方研究は,いわば古典に記載された病態を現代医学的な病変に当てはめる作業である.しかし,多分20~30年前までには決して診ることのなかった病態が現代社会にはいくつかみられるものと思う.その一つが,「空調」による「冷房病」と呼ばれる病態である.この「冷房病」には学問的に明確な定義はないが,以下のように理解するのがよいと思う.
現在では,職場,家庭の別なく空調が普及し,少なくとも梅雨の頃から9月まで,冷房の効きすぎたところにじっと座っているような人が増え,また人によっては何回となく冷房の効いたところと暑い外気の環境を往復することがある.これらの結果,通常の室温では無症状であるが,冷房の効いたところに長時間いることによって四肢の冷え,しびれ感,違和感,肩こり,腰痛を来し,感冒様症状を訴える.そのうちに,常温のところでも前記のような症状,不眠やその他の失調症状を生じるようになる.また,そのうえ冷えた飲み物や食べ物をとりすぎて,体内の内外から「冷え」をつくってしまうわけである.このため,とくに夏の終わり頃に消化器症状を中心に種々の異常を訴えることになるわけである.
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