JIM臨床画像コレクション
十二指腸前門脈(preduodenal portal vein)
八木橋 国博
1
,
安田 昌信
1
,
今西 幸市
2
1湘南鎌倉総合病院放射線科
2湘南鎌倉総合病院消化器内科
pp.756
発行日 1999年8月15日
Published Date 1999/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414902802
- 有料閲覧
- 文献概要
十二指腸前門脈は,器官発生段階に生じる奇形であり,門脈が通常の走行と異なって膵臓および十二指腸の腹側前面を走行し,十二指腸狭窄を引き起こすことがある.小児外科領域での報告例は散見されるが,成人報告例は非常に稀である.合併奇形としては腸回転異常,不完全あるいは完全内臓逆位,膵臓奇形,胆道閉鎖症,十二指腸閉鎖などが知られている.
症例は25歳,女性.食後に上腹部痛,腹部膨満,時折嘔吐を起こし,最近2ヵ月で体重が5kg減少し近医より紹介.左上図は上部消化管造影検査で,胃および十二指腸球部の著明な拡張を認めた.左中図は腹部CT検査で,膵臓の前面を門脈が走行しているが,十二指腸の前面を通過しているかどうかは不明.左下図では通常認められる下大静脈が肝臓後面で判然としなかった.同スライスで椎体の右前面に拡張した奇静脈を認め,下大静脈一奇静脈連結が疑われた.右上図では小腸が右側に寄っていることより腸回転異常が疑われた.右中図の腹部血管造影では門脈がL-shaped (矢印)と呼ばれる形状をなし,通常より右方へ変位していた.以上より,十二指腸前門脈による十二指腸下行部での狭窄による症状と診断し,十二指腸空腸吻合術を施行した.術中所見では,右下図のように十二指腸前面を門脈が走行し(血管テープ),その口側の十二指腸球部は著明に拡張していた.
Copyright © 1999, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.