日常診療のOne Point Advice
喘息発作時の呼吸困難は呼気性か?
中野 博
1
1天理市立病院内科
pp.64
発行日 1993年1月15日
Published Date 1993/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900717
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喘息発作時の肺機能検査上の変化は,1秒量や1秒率の低下で示される呼出障害が特徴である.そのことから,喘息発作時の呼吸困難は呼気相に強いという常識がある.しかし実際に喘息患者を診察していると,吸気のほうが苦しいと訴える患者が多い.このことを説明し得るいくつかの理由がある.
まず第1に呼気閉塞を防御する働きとしての吸気筋活動がある.すなわち発作時には,呼気時にも吸気筋の収縮が続き,このことが胸腔内圧の増加を防ぎ,また高い機能的残気量位を保ち,呼気閉塞を軽減しているとされている.高い機能的残気量位は吸気時にも吸気筋に負担をかけることになる.これらのことから発作時の安静換気時にはむしろ吸気筋に負荷がかかっていることになる.次に,喘息発作時には気管支のみならず,喉頭部も狭窄するとの報告もあり,その場合はそのことにより吸気の低抗が高まることになる.
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