法医学からみえる"臨床"・2
死亡診断書か死体検案書か―瀕死の患者を連れ去られ,死亡診断書を強要された医師
高濱 桂一
1
Keiichi Takahama
1
1宮崎医科大学法医学教室
pp.221
発行日 1991年5月15日
Published Date 1991/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900070
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[JIM]事例:198○年5月10日 司法解剖.割れたガラス片が刺さったと称して,深夜,右大腿部をタオルで止血した男が,外科病院に連れて来られた.大腿動静脈を切って重症であったが,手術はうまく行き,入院させた.ところが翌朝,身内と称するヤクザ風の男が現れ,担当医の制止も聞かず,強引に連れて帰ってしまった.更にその翌朝になって再び男が現れ,死亡したので死亡診断書を書いてくれと言う.担当医が,「検屍をした上でないと診断書が書けない」と突っぱねると,「治療した医師が自分の扱った患者の診断書をなぜ書けないのか」と凄まれた.恐くなった担当医が警察に連絡すると,今度は警察から,「なぜ治療の時点で連絡しなかったのか,せめて患者を連れて帰られた時点で連絡してくれなければ責任は持てない」と強くなじられた.その後,警察が調べた結果,暴力団の身内同士の傷害事件であったことが判明し,死体は司法解剖されることとなった.
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