特集 症候別“見逃してはならない”疾患の除外ポイント
【総論】
本特集の活用の仕方―症候別“見逃してはならない”疾患の除外ポイント
徳田 安春
1,2
1筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター
2水戸協同病院
キーワード:
リスク
,
重篤度
,
緊急度
,
仮説演繹法
,
超有用所見
Keyword:
リスク
,
重篤度
,
緊急度
,
仮説演繹法
,
超有用所見
pp.548-549
発行日 2013年7月15日
Published Date 2013/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102899
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“見逃してはならない”疾患はなぜ重要か
鑑別診断では,診断名にさまざまな用語をかぶせてその「可能性」の程度を表現することがよく行われている.most likely, likely, possible, などがそうである.しかしながら,臨床現場においては,検査前確率が低い疾患であっても,見逃すと生命あるいは機能的に予後不良なことがある疾患は,鑑別診断のリストにおいて重要な位置を占めるべきである.
このような,“見逃してはならない”疾患(do-not-miss diagnosis)は,競馬でたとえると,本命と対抗馬に続く大穴とも言える.「大穴」は,当たる可能性は低いが,当たるとこわい.医学判断学(medical decision-making)や決断分析学(decision analysis)の領域では,確率(probability)と効用値(utility)の両方をかけ合わせて考えたアプローチを用いるが,それをもとにすると,「期待値(臨床的リスク)=確率×効用値(重症度や緊急度)」が成立する.すなわち,当たる確率が低くても,重症度や緊急度が高いので,臨床的リスクが大きい.そういう疾患が「大穴」疾患である.ただし,決断分析学における期待値や効用値という言葉にはポジティブな印象があるので,「リスク」と「重篤度・緊急度」などという表現のほうが妥当だろう.ということで,「臨床的リスク=疾患確率×重篤度や緊急度」が成立する,と考えるようにするとわかりやすい.
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