豪州フリンダース大学における地域医療教育―地域医療を支えるために

オーストラリアの社会的背景と地域医療教育

　オーストラリアは地理的背景，人口の減少，少子高齢化，産業構造の変化などの社会的諸問題が，内陸部を中心とした医療過疎に関係している．地理的には都市の多くが東部を中心とした海岸線に分布する一方，内陸部には主要産業である農業，鉱山資源採掘などの拠点である人口数千人規模の小さな町が点在している．この地域では病院や診療所が存在していない町も数多くある．

　過疎地域での医療崩壊に対して政府は一定の指針を示して，改善に向けて努力してきた．まずは医師数の増加政策であり，新設医学部の承認と既存医学部の定員増加が急激に行われてきた．また，海外で医師免許を取得した外国人医師の積極的な受け入れも行っている^1）．さらには各大学医学部に過疎地域で卒前教育を行うカリキュラムを設定することを推進している．過疎地域において卒前医学教育を十分に行うことで，将来的な過疎地域での医師確保を推進することをねらいとしている．