シネマ解題 映画は楽しい考える糧[23]
「アダム」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院医学薬学研究部生命倫理学分野
pp.393
発行日 2009年5月15日
Published Date 2009/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101695
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生命倫理におけるクローン人間の問題
写真家の母親と高校教師の父親に深く愛されている一人息子アダムは,8歳の誕生日を迎えた後,交通事故で突然死亡しました.葬儀の直後,悲嘆に暮れる両親に,名優ロバート・デ・ニーロ扮する産科医かつ遺伝学の権威リチャード・ウェールズが話しかけます.リチャードはふたりの「力になりたい」と,秘密の計画をもちかけました.アダムのクローンをつくろうという話です.その後物語はトントン拍子に進み,オリジナルのアダムの体細胞核を用いて誕生したクローンのアダムが「2回目」の8歳の誕生日を迎えます.たくさんの友達と愛情深い両親に囲まれた人生最良のひと時です.
これで終われば「その後3人は末永く幸せに暮らしましたとさ」となるのですが,いやいや人生そんなに甘くない.オリジナルのアダムが死んだのと同じ8歳になってから,クローンのアダムが悪夢にうなされたり,夢遊病のようにフラフラしたり,幻覚をみたりしはじめるのです.素直で明るくよく笑う性格も,まだ反抗期を迎えたわけでもないのに一変してしまいました.両親が心配し戸惑っているのとは対照的に,リチャードは腹に一物ありげな様子でクローンのアダムに接します.そして疑念と幾重もの謎が現れ……あとは観てのお楽しみにしましょう.
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