特集 医師に必要な臨床栄養学
【症例報告】
低リン血症に伴う末梢神経障害・筋障害の例
林 竜一郎
1
,
足立 徹也
2
,
永山 正雄
3
1横浜市立市民病院神経内科
2横浜市立市民病院リハビリステーション科
3横浜市立脳血管医療センター神経内科・脳神経集中治療部・研究部
pp.938
発行日 2008年11月15日
Published Date 2008/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101552
- 有料閲覧
- 文献概要
50歳のクローン病男性が「体全体のしびれ」にて神経内科を初診した.患者には6回の小腸・大腸部分切除歴あり,1年前より両足に軽いしびれ感を自覚.しびれはその後両手指に拡大,両下肢脱力も出現した.背部・舌のしびれも加わり初診.るいそう・顔色不良,軽度の眼瞼結膜貧血・両下肢の浮腫,さらに神経学的には四肢の痛覚・振動覚の軽度低下・深部腱反射消失と両下肢近位筋脱力がみられた.白血球増加と軽度貧血・肝機能障害のほか,Na・KおよびCRPは正常,抗核抗体陰性,アルブミン3.4g/dl,CK 292IU/l.筋電図では筋原性変化,末梢神経伝導速度検査では下肢の運動・感覚伝導速度の軽度低下あり.ビタミンB群複合剤点滴は無効で,プレドニゾロン15mg/日を開始した.しかしその2週間後体調不良にて外科入院.補液と経管栄養でも症状はさらに悪化,呼吸不全を発症し人工呼吸管理となった.CRP上昇,CT上びまん性肺浸潤影あり,呼吸器科転科しメチルプレドニゾロン1g/日3日間投与(以後内服を漸減),同時に抗菌薬と中心静脈栄養(IVH)も開始された.後にびまん性肺胞出血と判明しビタミンKを補充*.同時に血清リン濃度0.2mg/dl(正常2.5~4.6)と判明,IVH(リン8mmol/日)開始後6日目に1.9,7日目に2.8と正常化した.IVH開始2週間後にはCK低下,1カ月後には人工呼吸器から離脱した.1カ月半後には座位保持が可能となり,ステロイド中止後も筋力は緩徐に改善,介助歩行可能にて訓練継続目的に転院となった.なお入院以前の保存血清による追加検査でも,血清リン値は0.4であった.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.