特集 帰してはいけない外来患者
【ケーススタディ】
かぜ症状の患者
児玉 貴光
1
,
箕輪 良行
1
1聖マリアンナ医科大学救急医学教室
キーワード:
かぜ症候群
,
ウイルス性心外膜炎
,
Influenza virus
,
心タンポナーデ
Keyword:
かぜ症候群
,
ウイルス性心外膜炎
,
Influenza virus
,
心タンポナーデ
pp.42-44
発行日 2007年1月15日
Published Date 2007/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100838
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Case
ウイルス性心外膜炎の発症を見落としていた例
患者:77歳,男性.
主訴:呼吸困難.
既往歴:高血圧症,慢性閉塞性肺疾患,慢性心不全.
現病歴:慢性疾患のため,かかりつけ医に通院中であった.咳嗽,熱発などのかぜ症状が出現し,上気道炎として治療を受けていた.症状が改善せず,呼吸困難が出現したため後方病院に紹介入院となった.
入院時現象:血圧165/99 mmHg,体温36.9℃,心機能NYHA(New York Heart Association)クラスⅢ.頸静脈の怒張なし.呼吸音は吸気,呼気時に湿性ラ音聴取.心音に異常なく,心膜摩擦音も聴取せず.胸部単純X線写真では,軽度の心拡大と両側肋骨横隔膜角の鈍化を認めた.12誘導心電図上は特記すべきことはなかった(図1).
入院後経過:当初は上気道炎を契機に慢性心不全が急性増悪したものと判断していた.しかし,入院後より急激に循環動態が悪化したため,心臓超音波検査(図2)を実施したところ,心囊水貯留による心タンポナーデが認められ,ウイルス性心外膜炎と診断された.
「かぜ(風邪)」は医学的にかぜ症候群としてとらえられており,鼻炎や咽頭炎を主症状とする上気道感染症である.代表的なcommon diseaseであり,たいがいは数日間の安静や対症療法で治癒するものである.
しかし,昔から「かぜは万病のもと」という戒めが示すように,こじれたかぜは時に命取りになりかねない.本稿では,Influenza感染症に続発した心外膜炎をとりあげる.
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