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日本の死因統計によると,大腸癌は癌の中で肺癌,胃癌に続く第3位を占める(2001年).しかし,“私は父を大腸ポリープで失いました”などという話はまず聞いたことがないだろう.ポリープで死ぬことがほとんどないのなら,放置しても良いのではないか? しかしそれは誤りである.“動脈硬化で死ぬ人はほとんどいないから放置して構わない”という考えが誤っているのと似ている.動脈硬化そのものは死因とならないが,それを放置するとそのうち心筋梗塞や脳梗塞などを起こして命に関わってくることがある.大腸ポリープも,一定程度大腸癌と関係があるのである.しかし,逆に大腸ポリープはすべて治療しなくてはならない,というのも誤りだ.
大腸ポリープは非常にポピュラーなものでほとんどの人がその名を知っているが,どのくらい悪い病気なのかは知らない人が多い.ポリープというのは病気の本体を表す用語ではなく,粘膜表面がコブないしキノコ状に盛り上がったものの総称である.このため,その中には全く無害で処置不要のものから,放置すると必ず命を脅かすものまでいろいろなものが含まれる.大腸ポリープのうち数的に多いのは腺腫性ポリープと化生性ポリープ(過形成性ポリープ)である1).内視鏡がファイバースコープだった頃は2~3mm以下の小さいポリープはあまり認識されなかった.このため,その頃の大腸ポリープというと実際上,大部分が腺腫性ポリープだった.しかし,今は電子スコープ時代となり,解像度も向上したため小さいものが認識されやすくなった.こうして2~3mm以下の小さい結節が日常の大腸内視鏡で多く見つかっている.直腸に多い化生性結節は小さく比較的扁平で,赤みを帯びていないことが多い.小さいものまで含めると,大腸ポリープのうち最も多いのはこれだということになるかもしれない.これら化生性結節,過形成性ポリープはまず癌化しないし,癌との関連もほとんどない.これに対し腺腫というのは腫瘍であり,多少とも癌化の可能性がある.
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