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予防医療における根拠に基づいた評価指標の重要性
予防医療は,疾病の発生を防ぐ一次予防,疾病を早期発見し,治療をする二次予防,そして疾病が発症した後の合併症を防ぐ三次予防に分類されるが,いずれにしろ,予防医療の対象となるのは基本的には無症状の患者である.何らかの症状を抱えて受診する患者に対して,医療者はベストを尽くすことは約束しても,決して健康を保障したりはしない.しかし,予防医療において,無症状の患者に対して医療者が積極的に介入する際には「…の検査を受ければ(あるいは…の習慣を変えれば),利益が害を上回ります」と暗黙の約束をしていることになる.したがって,利益が害を上回るという明確な根拠がなければ,いかなる予防医療も行ってはならない,またはきわめて慎重に行うべきである1).また,予防医療においても,臨床医は患者と意思決定を共有しなくてはならないことは言うまでもない.患者の自己決定権を尊重するためには,医師が患者に正確な情報を提供することが必須であり,そのためにも,さまざまな予防医療的介入の一つひとつについて,利益と害についてのデータをしっかりと持っておくことは重要である.さらには,限られた社会資源を公平に活用する意味でも,根拠に基づいた評価指標の作成は欠かせないものである.個々の医師,医療団体は自己の利益や関心,あるいはこれまでの慣習に惑わされることなく,限られた資源を地域社会のさまざまなニーズに対してどう配分するのかということを真剣に考える必要がある.
このように,患者の利益を優先する(害を与えない),患者の自己決定権を尊重する,公平な社会資源の活用という臨床倫理/プロフェッショナリズムの三大原則2, 3)(表1)の下に,予防医療において根拠に基づいた評価指標を作成することはきわめて重要である.
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