増刊号特集 泌尿器科外来診療—私はこうしている
Ⅴ.外来診療のポイント
尿路感染症
那須 保友
1
Yasutomo Nasu
1
1岡山大学医学部泌尿器科
pp.191-196
発行日 2000年3月30日
Published Date 2000/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902921
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1 はじめに
尿路感染症(urinary tract infection:UTI)とは,本来,腎,尿管,膀胱,尿道の感染症を意味するが,しばしば尿路の他に前立腺,精巣上体などの男性性器を含めた尿路性器感染症として論じられることがある。しかし本稿では,腎,尿管,膀胱における感染症に限定して述べる。その他の部位に関しては他の項を参照いただきたい。
泌尿器科外来診療において尿路感染症の占める割合は多く,また,呼吸器感染症などとともに臨床的に頻度の高い感染症の1つである。近年,broad spectrumで優れた抗菌力を有する抗菌薬の開発,普及に伴い,尿路感染症(UTI)を含めた細菌感染症全般の傾向として,抗菌性化学療法に反応する病態群と抵抗する病態群の2極化が顕著になった1)。前者では,急性単純性腎盂腎炎などの有熱性感染症についても外来での治療が可能となっている。本稿では,近年の感染症の2極化を基本として,外来診療を念頭に置き,診断,化学療法の基本的な考え方,および個々の病態における抗菌薬の選択,使用のポイントについて概説する。多くの事項は,近年の尿路感染症に対する知見に基づいた岡山大学医学部泌尿器科での実践を基本に記載した2,3)。
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