交見室
「人工的射精法の臨床的検討」を読んで/小児泌尿器科医の育成について
黒田 昌男
1
,
宇佐美 道之
1
1大阪府立成人病センター泌尿器科
pp.266-267
発行日 1994年3月20日
Published Date 1994/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413901146
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- 文献概要
本誌47巻11月号,小谷俊一先生の論文「人工的射精法の臨床的検討」(臨泌47:943-948,1993)を拝読させていただきました。射精障害による不妊症は,脊髄損傷において問題となることが多いのですが,われわれの施設では,悪性腫瘍患者が中心となるため,精巣腫瘍に対する後腹膜リンパ節郭清術の合併症として,多数の射精障害を経験しています。シスプラチンの導入以来,進行性精巣腫瘍は完治可能な疾患となってきており,後腹膜リンパ節郭清術を併用した場合に必ず起こる射精障害および不妊症の治療が今後の大きな課題になってくるものと思われます。これからの癌の治療は,ただ癌を治癒せしめるだけでは不十分で,治癒した後のQOLも重視しなくてはならなくなると考えられます。とくに精巣腫瘍では,20〜30歳台の若い患者が多く,その中には治癒した後に結婚する患者も数多く見受けられます。後腹膜リンパ節郭清術を行った患者では,射精障害は必発で,子供が欲しい場合には,この論文で試みているような人工的射精法が有用ではないかと思われます。後腹膜リンパ節郭清術による射精障害は末梢神経障害であるため,硫酸ネオスチグミンのクモ膜下注入は無効と思われますが.電気射精法は末梢にあるアルファ交感神経節を直接に電気的に刺激する方法なので十分に期待がもてる方法ではないかと思います。
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