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本特集では,夜間頻尿におけるクリニカルイナーシャ(clinical inertia : 臨床的惰性・慣性)について,泌尿器科医のみならず,脳神経内科医や循環器内科医の立場からもご解説をいただいた.それぞれの論文を読むとクリニカルイナーシャの具体例として,夜間頻尿では飲水指導や塩分制限,運動療法や睡眠リズムの確立といった行動療法が有効(first-line therapy)であることは知っているが忙しい臨床のなかでは実行できていないこと,多尿・夜間多尿の診断にはガイドライン上も排尿記録が必要不可欠であることは知っているが医師も患者も記録が煩雑なため実際には活用していないこと,夜間頻尿のなかで多尿・夜間多尿が最も多い病態であることは知っているが膀胱蓄尿障害(過活動膀胱や前立腺肥大症)に対する治療を優先してしまっていること,男性の夜間多尿による夜間頻尿に対して低用量デスモプレシン薬物療法が有効である(推奨されている)ことを知ってはいるが副作用(低ナトリウム血症など)が心配で実際には処方していないこと,などが実感される.
このようなクリニカルイナーシャに対する解決策として,本特集では夜間頻尿の代表的病態である多尿・夜間多尿,膀胱蓄尿障害,睡眠障害に対する治療戦略について詳細に解説するとともに,超高齢社会を迎えて大きな社会的問題となっているフレイルや認知症に関しても専門家よりご寄稿いただいた.さらに,本特集の後半では,「夜間多尿に対するリアルワールドの治療戦略」として,現在男性のみに保険適用となっている低用量デスモプレシン(ミニリンメルト®)薬物療法のtips&tricksと長期間服薬を継続するコツ,女性の夜間多尿による夜間頻尿に対する具体的な治療戦略について,明日からの実臨床ですぐに役立つ内容をまとめてある.
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