交見室
TURisを世に出し,ただ1つ心配していたこと
三木 誠
1
Makoto Miki
1
1新宿石川クリニック泌尿器科
pp.255
発行日 2020年3月20日
Published Date 2020/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413206839
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私は内視鏡関連の仕事を色々としてきたが,そのなかでオリンパス社と協力して開発したTURisシステムが最高の優れものであったと自負している.2002年に基礎的検討結果1)を,そして2003年に臨床成績2)を報告し,そこで初めてTURis(TUR in saline)という言葉を使った.TURisシステムが世界中で徐々に広まるのを見守りつつ,本誌交見室でも「TURisはbipolarではない」3)「TURBTは視野方向30度スコープで行おう」4)など意見を述べてきた.
一方,ただ1つ心配してきたのは「膀胱腫瘍に対し灌流液に生理食塩水を使って大丈夫か?」ということであった.TURis開発前のconventional TURを経験されていた方はご存知かと思うが,TURP実施時には非溶血性灌流液(ウリガール,ソルビトール,グリシン,グルコースなどの等張液)を使用していたが,TURBT時にはあえて滅菌蒸留水を使用していた.それは,切除時に遊離した腫瘍細胞が滅菌蒸留水に接して破壊され,腫瘍の播種,転移を防止するうえで役立つと考えられていたからである5).生理食塩水を使うということは,この理屈に反することになる.しかしTURisでは,TURPの最大の問題である低Na血症が回避でき,TURBT時の閉鎖神経反射も少なく,何よりもループ全体に放電発熱が起きて腫瘍切除がスムーズにできるという利点を有しており広く普及してきた.
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