増刊号特集 泌尿器科処方のすべて─すぐに使える実践ガイド
10 周術期
ハイリスク患者の管理
降圧薬服用中の患者
市場 晋吾
1
1日本医科大学付属病院外科系集中治療科
pp.253-255
発行日 2016年4月5日
Published Date 2016/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413205653
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疾患の概要
一般的には,収縮期血圧140mmHg以上,または拡張期血圧90mmHg以上のとき,高血圧と診断される.術前評価では,まず危険因子の有無,すなわち,臓器障害と心血管疾患の危険因子があるかどうかがポイントである.臓器障害では,心臓,脳,腎臓,血管の障害,眼底異常所見の有無が,心血管疾患の危険因子としては,糖尿病や喫煙などの有無とコントロールが挙げられる.現在の高血圧の重症度と,これらの臓器障害と危険因子の有無によって,リスクを判断することができる.
周術期においても,高血圧症は,心血管系イベント,例えば,左心室肥大による拡張不全,収縮能低下によるうっ血性心不全,腎障害,脳血管障害および心筋梗塞などの重要な危険因子の1つである.麻酔導入期には,交換神経系の活性化により,正常人で血圧は20〜30mmHg上昇し,心拍数は15〜20bpm上昇する.そして,麻酔が深くなるにつれてさまざまな原因,例えば麻酔薬の直接的な影響,交換神経系の抑制効果,動脈の圧受容体反射の制御能低下などにより,平均血圧は低下する.高血圧症の患者は,術中の血圧が低血圧や高血圧を繰り返して不安定になりやすく,心筋虚血,心筋梗塞を惹起する可能性がある.術直後は,麻酔から覚めてくるにつれて,血圧と心拍数がゆっくりと上昇してくるが,高血圧症の患者は有意に上昇し,拡張期血圧が110mmHg以上だと,明らかに心血管系合併症の頻度が増える.
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