Japanese
English
講座 泌尿器手術に必要な局所解剖・9
Ⅳ.尿管(2)
Regional Anatomy for Operative Surgery of Genito-urinary Organs・9: Ⅳ. Ureter (2)
佐藤 達夫
1
Tatsuo Sato
1
1東京医科歯科大学医学部解剖学第2講座
1Second Department of Anatomy, Fuculty of Medicine, Tokyo Medical and Dental University
pp.241-249
発行日 1989年3月20日
Published Date 1989/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413204943
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女性の骨盤部尿管
前回は腹部尿管ならびに男性の骨盤部尿管の位置関係について述べた。女性の骨盤部尿管は,骨盤内臓の性差を反映して,位置関係も別個に扱わなければならないし,とりわけ子宮動脈と近接して交叉するため,婦人科手術では尿管の位置関係がとくに重要である。
骨盤内臓の配置で男性と著しい差異は,膀胱と直腸の間に子宮と腟という大きな管状臓器が介在していることである。直腸も腟も,左右の肛門挙筋(骨盤隔膜)が正中部につくる前方に開いたU字形の裂隙を通過している。肛門挙筋の上面には筋膜(上骨盤隔膜筋膜)が密着し,少し上方に腹膜がかぶさっている。この筋膜と腹膜の間のすきま,すなわち腹膜外隙(腹膜下隙)は脈管神経に通路を提供すると同時に,疎性結合組織が豊富な層間隙でもある。疎性結合組織は脈管神経の周囲で凝縮する傾向をもち,いわゆる血管鞘とか外側靱帯と呼ばれる構造をつくる。その他に脈管神経との関連は稀薄だが,子宮と仙骨を結ぶ子宮仙骨靱帯(uterosacral ligament)をつくる(図11),22))。この靱帯は子宮頸部と腟の上部から起こり,直腸のわきを通過して第2〜第4前仙骨孔の高さで仙骨前面に付着する。つまり,かなりの上下径をもった構造物であって,腹膜はこの内壁に沿って陥凹し,いわゆるダグラス窩をつくる(図2)。窩のふちをなすこの靱帯の腹膜ヒダを直腸子宮ヒダと呼ぶ。
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