小さな工夫
上部尿路上皮腫瘍症例におけるセル・ブロック法
小山 雄三
1
,
藤沢 紀良
2
,
佐藤 敏美
2
1国立霞ヶ浦病院泌尿器科
2国立霞ヶ浦病院病理
pp.754
発行日 1985年9月20日
Published Date 1985/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413204124
- 有料閲覧
- 文献概要
膀胱腫瘍と異なり上部尿路上皮腫瘍では一般に内視鏡や生検を行うことができないので,細胞診はきわめて診断的意義のある検査法である。しかし,炎症が加われば剥離細胞に変化が生じたり,また高分化型の腫瘍ではN/C比の低下などで細胞診診断の困難なことがある。細胞診陽性所見は悪性疾患を強く示唆するものの絶対的所見ではない。そこで尿を遠沈し,沈渣をパラフィンに包埋し,薄切,H.E.染色を行ういわゆるセル・ブロック法を適応した症例を経験し,泌尿器科医にとつて非常に有意義な検査法であると思われたのでここに紹介する。第1図は尿管腫瘍の疑いの患者の尿管カテーテル洗浄液の細胞診所見である。class Ⅳと診断されたが,さらにセル・ブロック法により観察したところ,第2図のように移行上皮癌と術前に確定診断が得られ,腎尿管全摘出術膀胱部分切除術を施行した。第3図はその摘出標本の組織像である。細胞集塊を多く認める症例においては,細胞診では単なる細胞の重積塊として見られるだけであるが,このような症例においてセル・ブロック法はきわめて有効である。腎盂・尿管腫瘍を疑うも細胞診がclass Ⅲ以下の症例や,細胞診陽性の症例においても診断を確実にする目的でセル・ブロック法を行う価値があると考える。
Copyright © 1985, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.