交見室
進行性膀胱腫瘍の動注療法について/インポテンスに対するprosthesis挿入手術について
加納 勝利
1
,
藤岡 知昭
2
1筑波大学臨床医学系泌尿器科
2岩手医科大学泌尿器科学講座
pp.734-735
発行日 1984年8月20日
Published Date 1984/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413203875
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本誌38巻6号に掲載された熊谷章氏らの論文「進行性膀胱腫瘍,前立腺腫瘍に対する選択的動注療法の経験」を興味深く読ませて頂いた。われわれも進行性膀胱腫瘍やホルモン抵抗性前立腺癌に対して,上臀動脈や下臀動脈からの選択的長期動注療法を行つて発表した1,2)。膀胱腫瘍の動注療法では効果判定が困難な症例を経験している。有茎性の腫瘍ではCT, Echoなどによつて,治療前後の大きさ,浸潤度は比較的測定しやすいが,広基性のものでは,膀胱壁そのものが薄いために,測定が困難なことが多い。膀胱全摘除術を施行した症例では,摘除標本で検討すれば簡単なように思われがちであるが,それとても容易ではない場合がある。完全に消失した症例では,治療前の浸潤度の判定は困難であるが,効果判定に関しては容易である。しかし,これも,治療前の生検でpT3であつたものが,TURで切除した底面よりの出血をTUCすることによつて,残つたと思われた腫瘍が壊死して,残存しなかつたという場合もありうるので,化学療法による直接効果であるとの判定が困難な症例もある。
さらに,動注療法では,薬剤の分布が均等ではなく,ある部分では高濃度に注入されて腫瘍が消失したにもかかわらず,ある部分ではほとんど抗癌剤が注入されず無効な部も生じ,これを無効な部の組織像をもつて無効と判定される恐れも否定できない。
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