Urological Letter・191
見のがしやすい入口の小さい膀胱憩室癌の診断
pp.830
発行日 1976年10月20日
Published Date 1976/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413202232
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多くの泌尿器科医は膀胱憩室内の癌が増加していることに気づいている。それでもなお,本症の存在を念頭におくように強調しなければならない。特に説明できない血尿のある際にはなおさらである。最近2例に遭遇したが,これらの症例が上述の問題をよく物語つている。
第1例:81歳の老人が1ヵ月間続いている痛みのない肉眼的血尿を主訴としてやつて来た。彼が診察室に来た時は血尿が出ていたのですぐ膀胱鏡検査を行なつたが,両側尿管口からの尿は正常尿であつた。膀胱内を注意深くしらべたが,かなり高度の肉柱形成と前立腺肥大のため膀胱頸部が閉塞している以外異常はなかつた。排泄性尿路X線写真を撮つたところ,膀胱は大きくなつており,右半分に充盈欠損のあることがわかつた。二重映像(double densities)は見られなかつた。再び膀胱鏡検査をしたが,膀胱内景はやはり正常と思われた。そこで逆行性膀胱造影を行なつてみたら斜位で撮つたフィルム上に,膀胱と同じ大きさの大きい膀胱憩室が明瞭に描出されたのであつた。前の充盈欠損部がこの憩室に一致していた。膀胱外からの経路で,膀胱壁のカフ(Cuff)を含めて全憩室を摘出した。病理検査で腫瘍はIII度の移行上皮癌であり,憩室壁外への浸潤はないことがわかつた。
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