文献抄録
腎摘除術に代る尿管腎杯吻合について
pp.662
発行日 1976年8月20日
Published Date 1976/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413202202
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腎盂尿管移行部あるいはその近接部の狭窄症に対しての手術術式はいろいろ工夫されているが,腎盂の瘢痕性狭窄が高度であつたりすると腎盂と尿管や尿管代用の腸管吻合が困難なことがしばしばある。かかる際には永久腎瘻設置や腎摘除術が施行されるが,これに代つて尿管・下腎杯吻合法は有効な方法である。この方法は現在まで50例近くが先人により報告されているが,著者は3例の子供に実施してその経験を述べている。
第1例は14歳の少年で,オートバイ事故で右尿管腎盂接合部の損傷をうけ,3週間後に尿漏による腹部腫脹に気づいた。このために尿管断端腎盂部の炎症が強く,尿管・腎盂再吻合は困難なので尿管・下腎杯吻合を行なつた。しかし,この際腎下極皮質を残して尿管を取り囲むようにしたためこの部の狭窄を来したので再度手術を行なつて成功した。第2例,第3例はいずれも5歳の幼児で,両側尿管の逆流がありこの逆流防止手術をうけたが,腎盂尿管移行部の炎症性瘢痕狭窄による水腎形成もあり,一時的に腎瘻設置術後に下腎杯と尿管を再吻合して好結果を得ている。著者らは本術式の施行に際しての注意事項として,被術者の年齢,一般状態が手術にたえ得ること,また他側腎の機能が充分保持されていることが必要である。
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