文献抄録
両側性精嚢腺嚢腫
pp.259
発行日 1970年3月20日
Published Date 1970/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413200893
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精嚢腺の嚢腫は極めて稀な疾患で現在まで文献的に13例が報告されているのみである。著者がここに報告する症例は従来の症例と異なり両側性かつ60才台という高令者に見られたもので文献的にもこのような症例は見当らない。
症例は69才で結婚,性生活も営み得る健康な男性であるが,昼夜間の頻尿と排尿障害を主訴に入院した。既往症として15年来慢性前立腺炎をもつていた。検査では膀胱の拡張と膀胱底の挙上が見られ,直腸診で前立腺上方に固い腫瘤を触れるが可動性で周囲との癒着はない。尿所見では沈渣に少数の白赤血球を認めたが培養では菌陰性,内視鏡では後部尿道の延長と三角部の著明な膨隆が見られた。排泄性腎盂像は正常。膀胱造影では直腸の後方圧排著明かつ膀胱底後部尿道の前方圧迫像も顕著に認められた。その他胸部,心電図にも異常はない。以上の所見から鑑別診断として,S状腸,結腸等の憩室形成,膀胱の筋腫,ミユラー氏管嚢腫あるいは直腸腫瘍の膀胱浸潤等が考えられるが,下腹部正中切開にて開腹術を施行した。膀胱後方に精嚢腺の位置に6×5×4cmの嚢腫を認め,この肥厚した壁を切除すると内容はムチン,ゲラチン様の物質でみたされ,一部血性であつた。嚢腫にドレーンをおき壁を切除して術を終つた。
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