書評
「アウトブレイクの危機管理 第2版―新型インフルエンザ・感染症・食中毒の事例から学ぶ」―阿彦忠之,稲垣智一,尾﨑米厚,中瀨克己,前田秀雄 著
田上 豊資
1
1高知県中央東福祉保健所
pp.714
発行日 2013年8月20日
Published Date 2013/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413103300
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本書の第1版が出版されたのは2000年である。当時は1995年に阪神・淡路大震災,1996年に堺市のO157食中毒事件が発生した後であり,公衆衛生現場に健康危機管理の機運が高まっていた。それから12年が経過し,公衆衛生現場待望の第2版がこのたび,出版された。この間,2002年のSARS,2003年の鳥インフルエンザ,2009年の新型インフルエンザといったグローバルな健康危機が発生した。また,2年前には東日本大震災という未曽有の災害も発生した。本書から学ぶ健康危機管理の対応が求められる事例は引き続き起こっているのである。
本書が大学で学ぶ教科書と全く異なるのは,現場従事者に役立つ実践的な本づくりに徹している点である。著者(阿彦忠之氏,中瀨克己氏,前田秀雄氏,稲垣智一氏)は,保健所や衛生研究所,本庁等において公衆衛生行政に長く従事されている実務者であり,著者代表の尾﨑米厚氏も,現在は鳥取大学で教鞭をとっておられるが,以前は国立公衆衛生院で公衆衛生医・保健師の現任教育や研究に携わっている。本書は,こうした現場の公衆衛生に精通した執筆陣が具体事例を集めて執筆した,いわば「現場がつくった現場に役立つ実践テキスト」である。
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