書評
「がんサバイバー―医学・心理・社会的アプローチでがん治療を結いなおす」―Kenneth D. Miller 原書編集/勝俣範之 監訳/金 容壱,大山万容 訳
田村 和夫
1
1福岡大学/腫瘍・血液・感染症内科学
pp.1032
発行日 2012年12月20日
Published Date 2012/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102974
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
がんサバイバー,日本ではまだ聞き慣れない言葉である。本書では,このなじみのない言葉を明確に定義し,その概念を記述するにとどまらず,心身の急性期・晩期障害を詳細に記載している。そればかりか,医療の現場では語られない,むしろ避けて通ってきた性や子育て,家族・介護者の問題を正面から取り上げている。編者のMiller医師自身,がんサバイバーの妻を持ち,自らの体験が本書に取り上げたがんサバイバーの問題や課題をリアルなものにしている。また,本書の意を伝えるため,わかりやすく日本語訳された金 容壱,大山万容両氏ならびに監訳者である勝俣範之氏に敬意を表したい。
本書は,がんと診断されたすべてのステージの患者,すなわちがんと診断されて治療を受けている患者ばかりでなく,治療終了者ならびに患者家族や介護者をすべて包含して話を進めている。日本では毎年70万人を超える人ががんに罹患し,35万人ががんによって死亡している。単純に計算すれば,毎年35万人のがんサバイバーが出現することになる。もちろん複数のがんを持っている例や他の疾患で亡くなる患者もいるので,この数がそのまま実数にはならないが,それぞれの患者に家族や介護者がいるわけで,それにしても想像を絶するがんサバイバー数となる。
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.