書評
「レジデントのための腎臓病診療マニュアル 第2版」―深川雅史,吉田裕明,安田 隆 編
平方 秀樹
1
1福岡赤十字病院
pp.845
発行日 2012年10月20日
Published Date 2012/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102926
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腎臓は体液の恒常性維持を司る唯一の臓器で,腎臓内科学の分野で最も面白いのは,体液バランス(水,ナトリウム,カリウム,細胞外液,酸塩基平衡など)異常を解釈し,その是正治療にあたることで,多くの腎臓専門医の最初の動機となってきた。腎臓内科学の教科書の評価は,この分野をいかに記述しているかで決まる。本書は初版でも非常に好評であった。今回の改訂版でも,最も多くのページ数を費やしている。机上で,現場で,繰り返して眼を通して欲しい。この分野を修めることは内科学の基本となる。
慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の概念が提唱されて10年が経過し,わが国でも広く定着してきた。すなわち,CKDの管理は,慢性腎不全の進行を遅らせて透析導入・腎移植を防ぐことだけでなく,高率に併発する心血管イベントのリスクを軽減することも目標となる。これまで以上に早い時期からCKDに気付き,腎障害だけでなく心血管合併症にも対応してゆくことが重要で,このことが腎臓専門医だけでなく,非専門医や一般の方々に広く啓発されてきた。近年,KDIGO(kidney disease:improving global outcomes)は,これまでの分類にタンパク尿(アルブミン尿)の程度を組み入れ,ステージ3を3aと3bに分け,より精密な分類とし,さらには,CKDの原因疾患をも考慮して対処するように改訂した。このKDIGOによる新分類は,CKDの意義の啓発という第一段階を経て,より確実な治療介入を要求する次の段階に進んだことを意味している。このことが本改訂版で強調されている。
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