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平成20年は,さまざまな意味で医療が注目された年であった。平成16年から始まった新医師臨床研修制度が5年目を迎え,その影響なのか,医師の地域偏在化,診療科の偏在化が明らかになった。これらの問題は,当初はわれわれ医療従事者だけが危惧したものであったが,今や新聞,報道テレビなどのマスコミのどこかで毎日のように特集されるようになり,国民の関心事の1つになった。
テレビドラマや小説でも医療の世界は相変わらず人気が高い。その代表格のテレビドラマが『チーム・バチスタの栄光』と『風のガーデン』である。『栄光』は,現役医師で超人気作家である海堂尊のベストセラーのドラマ化で,大学の心臓外科チームの活躍を描くミステリーである。『風のガーデン』は,主演の中井貴一が自らも進行性の癌を持つ,麻酔科・ペインクリニックの少壮准教授の最後の余命半年を演じたテレビドラマであった。録画しておいたものを帰宅後に観るのを楽しみにしていたが,残念ながら2つのドラマには泌尿器科医は1人も登場しなかった。ほぼ同時期に『小児救命』という24時間体制で働く小児科開業医のドラマも放映された。気管支喘息,脳腫瘍,腹部損傷などさまざまな疾患のこどもが登場したが,膀胱尿管逆流症による高熱の尿路感染症や急性陰囊症の代表疾患である精索捻転症などは登場しなかった。そういえば,2年ほど前の人気ドラマ『医龍』は,手術室での外科系のストーリーであったにもかかわらず,登場するのは,消化器外科医,心臓外科医,麻酔科医などであり,泌尿器科医が尿管損傷のレスキューで呼ばれたり,尿路確保のために導尿を依頼されたりする場面にはお目にかからなかった。つまり泌尿器科は世間的にみれば“凪”の状態が続いている。
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