特集 ここが聞きたい―泌尿器科処置・手術とトラブル対処法
Ⅱ.泌尿器科手術
D.開腹手術
■腎の手術
【腎部分切除術】
71.腎部分切除術を施行した患者です。術後8日目,突然,尿閉をきたすような血尿がみられました。どのように対処すればよいでしょうか。
白木 良一
1
1藤田保健衛生大学医学部腎泌尿器外科
pp.220-221
発行日 2007年4月5日
Published Date 2007/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101148
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腎部分切除術の合併症として,偽性動脈瘤(pseudoaneurysms)形成による血尿がときに認められる。凝血塊による尿閉をきたすほどの出血であれば,部分切除部に形成された偽性動脈瘤から尿路への出血をまず考えるべきである。偽性動脈瘤による出血の発症時期は,術後5日目から3か月までと比較的差があると報告されている1)。発生率は開腹手術で0.43~2.0%1~3),腹腔鏡下手術で1.2~3.7%程度4~6)と報告されている。偽性動脈瘤の発生原因としては以下の2つが提唱されている。1つは部分切除で切断,傷害された血管の凝血が時間とともに溶出し,局所で血管壁が膨瘤し動脈瘤を形成し尿路へのドレナージが突発的に起こったというものであり,ほかの原因として,止血に際し実質を貫通した縫合糸が原因で一部傷害された血管壁より偽性動脈瘤を形成し出血したと考えられるものである。
また,腹腔鏡下手術で発症率がやや高い傾向があり,切除部に露出した動脈をピンポイントで結紮処理できない点や,術中の気腹圧によりコントロールされていた血管の微小出血が術後徐々に増大した可能性などが示唆される。開腹手術による腎部分切除術にかかわる合併症を検討したPasticierら2)の報告では,合併症発症率に有意に相関する因子として,imperative case,経験症例数,腫瘍サイズが挙げられている。
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