特集 前立腺疾患のすべて
Ⅴ 前立腺疾患のトピックス
血清中総PSA測定の標準化に関する考え方―PSA検査標準化専門委員会作業部会による試案
加野 象次郎
1
Shojiro Kano
1
1PSA検査標準化専門委員会作業部会/東京逓信病院臨床検査科
pp.316-322
発行日 2003年4月5日
Published Date 2003/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413100875
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1 はじめに
臨床検査の医療における重要性が増すなかで,それが診断指針や治療指針の判別値や目標値に組み込まれ,広く利用される指標としてその真価を発揮するには,標準化が必須である。すなわち,正確さを基盤にした測定体系に沿って測定値の施設間差やキット間差を解消し,検査データを相互に共有し共通化する課題である。今日,検診や医療の現場で広く利用されている日本動脈硬化学会による動脈硬化性疾患診療ガイドラインも,わが国における血清コレステロール測定の標準化の達成という土台の上に成り立っていることはいうまでもない。
前立腺特異抗原(PSA)についてはどうであろうか。わが国においては過去2回,日本泌尿器科学会と日本臨床検査医学会が中心となって解析的なサーベイを行い,血清中総PSA測定のキット間差の現状とその誤差要因を明らかにするとともに,望ましい免疫反応性への方向づけを促してきたのであるが,標準化への本格的な取り組みには至っていなかった。そこで,2002年1月に日本泌尿器科学会が日本臨床検査標準協議会(JCCLS)へ加入したことが契機となって,4月にPSA検査標準化専門委員会が山中英壽群馬大学医学部泌尿器科学教授を委員長として組織され(表1),血清中総PSA測定の標準化についての検討を開始した。本稿においては,標準化と測定体系や免疫学的測定の特徴,これまでの経緯や問題点などに触れた後,当作業部会で検討し立案した「血清中総PSAの基準測定体系(案)」について解説し,われわれの標準化に関する考え方を提示して,ご批判を請いたい。
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