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1 はじめに
慢性前立腺炎は,旧分類では慢性細菌性と慢性非細菌性に分類されていたが,新分類では,慢性細菌性前立腺炎はカテゴリーⅡに,慢性非細菌性前立腺炎はprostatodynia(前立腺痛)を含めてカテゴリーⅢ(慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群)に区分され,それがさらに,カテゴリーⅢA:炎症性,カテゴリーⅢB:非炎症性に分けられた。慢性前立腺炎のなかで細菌が分離されるのは5~10%にすぎず,大多数が慢性非細菌性前立腺炎の範疇に入ってしまうことを考えれば,今回の分類は前立腺炎の症状を重視し,症候群としてとらえたものともいえ,より臨床的な分類になったと考えられる。
さて,今回筆者に与えられたテーマは,特異性前立腺炎(クラミジアなど)ということであるが,特異性前立腺炎とは,本来,結核菌,真菌あるいは梅毒などにより特異的な炎症像を呈する前立腺炎を指す。クラミジアやウレアプラズマなどによる前立腺炎を特異性前立腺炎として扱うかどうかは定まっておらず,クラミジアによる前立腺炎が特異的な炎症像を示すかどうかも明確になっていないのが現状と思われる。このような状況から,今回与えられた特異性前立腺炎(クラミジアなど)というテーマのなかで論じなければならないことは,慢性前立腺炎における一般細菌以外の微生物の関与の可能性について言及し,その微生物が原因となった場合の治療法について触れることであると解釈して話しを進めることとする。
最初に,特異性前立腺炎とよばれる疾患について触れておくが,まず,結核性前立腺炎についていえば,結核菌(Mycobacterium tuberculosis)による全身的な感染症に伴って起こるものであり,現在では稀な疾患といわざるを得ない1)。近年,問題になっているのはむしろ,表在性膀胱癌に対するBCG(bacillus of Calmette-Gue´rin)膀胱内注入療法後の肉芽腫性前立腺炎であると思われるため,この点については別項で述べる。また,真菌による前立腺炎に関しては,blastomycosis,coccidioidomycosis,あるいはcryptococcusなどによるものが報告されているが1),これらもきわめてまれな疾患であるためここでは触れない。
本稿では,慢性前立腺炎におけるChlamydia trachomatis(クラミジア)やUreaplasma urealyticum(ウレアプラズマ)などの関わりについて文献的に考察し,治療法について述べるとともに,併せてBCG膀胱内注入療法後の特異性前立腺炎についても簡単に触れることとする。
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